11.17対政府交渉・団体要請(概要)
 日本医労連は11月17日、厚労省、総務省、文部科学省、農林水産省、財務省、人事院、および独立行政法人の国立病院機構と労働者健康福祉機構、また、日赤本社へ「対政府交渉・団体要請行動」をおこないました。交渉の概要を掲載します。

厚労省交渉(診療報酬、医療・年金、介護・福祉)

厚労省、保険免責制度導入せず
 交渉では、(1)公的医療保険制度をきり崩す、保険免責制度に関し、厚労省が「本人3割負担導入時の法改正・附則(将来にわたって7割給付維持)に反するので導入しない」と回答。
 (2)高齢者医療制度新設や都道府県単位の保険者再編問題で、交渉団は国民負担増だけで国の責任放棄だと厳しく追及しました。
 また(3)介護保険制度改悪後、負担増から退所が相次ぎ、悪化の末死亡する等の実態を示し、調査・改善を要求。省側の「保険制度維持」の発言に、交渉団は社会保障ではないのかと強く抗議。調査と改善を当局に約しました。
 (4)診療報酬改定問題では、看護師の相つぐ退職や医療現場の大きな変化、超過密労働の実態を指摘、大幅増員を保障する改定を要求。また、『人』に対する明確な保障が安全・安心の医療と看護をつくる事を主張。これに当局は「要請を踏まえ、より手厚い看護体制について中医協で検討中」と回答しました。

厚労省交渉(看護、増員、医政局)

経営者・自治体任せ 国の責任放棄に怒り
 需給見通しは、「基準(前提とされる勤務条件)を加味して策定するよう都道府県に依頼。県とのヒアリングはほぼ完了。見通し確定は1/2以下。県は数字を上積みしてきている」と答弁。交渉団は、『前提となる勤務条件』で積算したら何人になるのか、調査に勤務条件が盛り込まれていない点や、県の見通しの勤務条件反映の有無のチェツクなど、国の責任を厳しく追及。
 また「『看護職員確保法・基本指針』は見直す方向で、内容について検討会や県等に意見を聞いて改正」と、一歩踏み込んだ回答をしました。
 事故防止では「安全機器購入の減税措置(20%)を継続、3品目増やした」と回答。リスクマネージャーは、「特定機能病院の専任、臨床研修病院は兼務も可で、義務付けている」が、それ以外の病院は病院任せの方針を変えていません。
 2年課程通信制は、「平成18年度は6校が申請、19校(16県)になる。暫時開設に期待。実習の休暇は管理者と相談して欲しい」、制度一本化は、「関係団体の理解が得られていない」と答弁。国の無責任さを厳しく追求しました。

厚労省交渉(医療提供体制・公的医療)
 
公的医療機関削減・医師不足問題で追及
 交渉では当局が(1)「予算をアップさせ、小児医療の充実と医師確保に努力」「医師需給の検討会が年内に結果を出すので対応したい」と回答。交渉団は医師不足を地域の切実な問題とする地元紙も紹介。内科医不足で病院、病棟閉鎖が相次ぐ深刻な実態を訴え、緊急の対策の必要性と、安定した医師供給システム創設が行政の責任であると追及しました。
 (2)公的医療機関の削減計画問題では、九州厚生年金病院を守る会代表が6304筆の署名を持参。市立病院副院長や市大助教授を講師に迎えた守る会の活動と地域の声の広がりを訴え、「計画だけで医師、看護師の退職が続く」、「健診・予防を奨励しながらの健診センター整理計画推進は矛盾」と追及。「病院は現状と同等の内容で移譲するので廃止ではない」(同省)とする発言に、交渉団は「現在の公的病院施設の存続充実が求められており、削減廃止すべきではない」と追及しました。

厚労省交渉(労働基準・最低賃金・派遣・労働安全)

不払残業・宿日直救急対応で追及
 (1)医療の産別最賃制度化で、当局は「申請要件を満せば適切に対応する」「産別最賃廃止問題は現在、労政審最賃部会で審議中」と回答。交渉団は医療の産別最賃制度化を準備しており廃止しない事、地域包括最賃額の引上げ等を要請。
 (2)不払い残業一掃問題、(3)違法宿日直問題では「不払い残業は重要な問題、周知・徹底・指導を行っている」「宿日直で7000事業所を調査し、うち病院は596件。430件(72%)の違法が分かり現在指導中」(同省)と回答。交渉団の追及の中「医師の宿日直等、医療の救急対応を36協定の特別条項で許可する事はふさわしくない」「特別条項は臨時的・一時的・突発的なものに限る」(同省)と回答。
 オンコールの考え方では「検討し回答する」としました。交渉団は、休憩も取れない労働実態や医師の過重労働による自殺の例、36協定の労働者代表選出問題等を出し、医療・介護職場への独自通達を含め、監督・指導強化を要請しました。

総務省交渉

安全対策での機器購入に財政的支援可
 交渉では(1)自治体立病院の廃止・民間移譲、地方独法化、指定管理者制度、地方公営企業法の全部適用など強制・誘導は行わない(2)「安全コスト」を公的負担で行う(3)看護師等の人員確保への支援(4)実効性ある医師確保対策(5)医師確保の都道府県「医療対策協議会」への住民代表・労組代表の参加等を要請。総務省は(1)医療機関の経営形態・再編は各自治体の責任で検討、当省として指導していない(2)安全対策での機器購入で財政補助は可能(3)人員増対策には診療報酬改善が必要(4)医師対策は連絡協議会で検討中(5)対策協議会への住民・労組代表参加は拒まないなどと回答しました。

文部科学省交渉

不払残業の“調査結果”を示し追及
 交渉団は、国立大の法人移行後の「勤務条件調査結果」を提出。看護師等の人員不足問題、時間外労働の常態化、サービス残業放置の実態に対し、文科省は「法律通り残業手当を支払うのは当然」と回答。また事務職の労働実態調査では残業30時間で手当カットされている実態に、交渉団が「不払い是正の指導をしているか」と厳しく追及。当局は「残業手当は法律に基づき全て支払うのは当然」「出された問題は今後の指導の中でも報告していく」と答弁しました。
 交渉では医師・看護師不足の実態と養成、確保の問題も併せて追及しました。

農林水産省交渉

農山村地域の医師不足改善を
 交渉では、「固定比率」をJA水準に合わせる財務基準見直し方針に対し、医療機関としての厚生連とJAの人件費率や固定比率の違いが大きく、基準見直しにより一時金が削減される実態など数字も示し、適切な改善を要望。また、厚生連病院では医師充足率が低く、農山村地域と都市部との格差が2倍に近い等の問題を説明し、医師養成の見直し改善へ関係省庁への働きかけを要請。同省は「健全経営にむけた指導。農協法を根拠に同一の適用が求められる」「医師・看護師不足は、農民の健康を作る会等に農水省や厚労省が同席を求められ意見交換を行う」との回答にとどまりました。

財務省交渉

国民へ過酷な負担強いる政策中止を
 最初に財務省は「現在の医療制度の破綻を避けるため、負担の均衡を考え、改革実施を厚労省に要請した。地方自治体への三位一体改革も同様である。国家財政が厳しい中、消費税引上げや定率減税廃止も止むを得ない」と回答。交渉団からは(1)相次ぐ医療制度改悪で過酷な負担に耐えられない、(2)先進国中で対GDPでの社会保障費割合が少ないのに更なる削減はおかしい、(3)消費税引き上げなどは国民生活を破壊する、(4)地方切り捨ての「三位一体改革」ではなく、国の責任を果たすべきだと要請を行ないました。

人事院交渉

人勧に抗議 給与制度に批判集中
 交渉団は人事院勧告に対し「大幅な賃金引下げと、査定昇給導入、勤務成績反映の給与制度など、大改悪だ」と抗議。査定昇級など「勤務成績を評価した給与制度」については「3交代等の24時間体制の中で、統一して公平な評価を行えるのか」「長期の休暇では評価が下がり、産休・病気もとれなくなる」「客観的な評価基準を示せない」「医療の現場に合わない制度だ」と厳しい追及が行われました。人事院側も「まず、霞ヶ関の事務の仕事で試行するが、職域をどこまで拡大するかは不明」と回答。交渉団は人事院の責任を追及しました。

独立行政法人国立病院機構

配置人員増と非常勤職員の処遇改善を
 全医労組合員約130名の激励行動を受け、機構本部への要請交渉を行ないました。要請に対し「看護師は、今年度約1000名増員した。夜勤体制は2・8が基本で、国立病院の夜勤回数は平均7・9回」「医療事故防止や安全対策を重視し、特に人工呼吸器等の取り扱いには重点的に対策を講じた」「賃金・労働条件は、全医労との労使交渉を尊重し、合意を得るよう努力」(機構本部)と回答。これに対し、参加者は「独立行政法人化以降、年休取得率が低下した」「産休や病休が出ると、月9回以上の夜勤になる。職場実態をふまえ、配置人員を増やすべき」「人工呼吸器事故等で、病院や看護師が被告となっている。国立病院は、率先して改善を行う必要がある」「非常勤職員の処遇改善を重視し、対策を講じて欲しい」と、機構本部に改善を求めました。

独立行政法人労働者健康福祉機構

成果主義反対署名 8500筆提出
 全国から約70名が参加した決起集会では、成果主義反対署名が9500筆に達し、職員の3分の2を超える圧倒的多数が成果主義の導入に反対の意志表示をしたと報告され、「病棟を回り職員と対話しながら」「組合員が成果主義の内容を徹底して学習した」等々の署名の取組みが報告されました。
 その後、機構本部に対し署名を提出、「職員の声を重く受けとめ成果主義導入提案は撤回せよ」と強く要求。参加者からは「導入した職場の実態を把握しているか」「患者の命をないがしろにする制度」等の追求が相次ぎました。
 機構側は「署名は重みを持って受けとめる」としながら、「引き続き議論していきたい」との答弁にとどまりました。安全・安心の労災病院を守るためにも、成果主義賃金の導入を、絶対に撤回させる決意に満ちた行動でした。

日赤本社前行動

赤十字の看護 壊さないで
 日赤本社前に全日赤の仲間60人が結集、06年の賃金引き下げ・成果主義導入をねらう日赤本社に対し、抗議行動と要請を実施。
 要請参加者からは「勤務評定の話では職場の上司が頭を抱えていた。客観的評価ができないなら一方的導入はやめて」、「頑張っていない看護師はいない。今年も大勢退職するが、成果主義導入で更に退職者が増える」、「40年日赤看護師として病棟全員のチームの結束力を大事に働いてきた。先輩が厳しく後輩を指導し、赤十字の看護を守ってきたが、それを壊すのが成果主義賃金」、「部下の評価ではなく、長所を伸ばすことが上司の役割。成果主義では足の引っ張り合いで、よい仕事はできない」など次々に発言。これに対し本社側は「日赤の賃金は人勧そのままではない。今後も全日赤と話し合いを続けていきたい」と回答するにとどまりました。