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【医療の目】問われる医療経営 看護労働と社会的責任 |
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利潤至上主義の矛盾が表面化するなかで、「企業の社会的責任(CSR)」が問われている。
医療における経営者の社会的責任は何だろうか。患者が安心して心おきなく医療を受けられることと、その医療機関に働く労働者が、安全・正確・迅速にゆきとどいた医療や看護を提供でき、自らも健康で、仕事のやりがいや誇りを失わず仕事に専念できる、そのための経営責任ではないだろうか。
看護の側面から考えると、最近経営責任が免罪されすぎてはいないかと思える。最たるものが、「夜勤協定」である。「夜勤が有害業務」であることは、学者や諸外国では常識である。ILO「夜業に関する勧告」でも、夜間の労働規制、時間外及び変形労働の禁止、深夜労働の間隔、家庭責任を持つ労働者及び高齢者への就労制限、健康管理に関する特別な措置を設けることを求めている。「夜勤者は10年寿命が短い」というヴィスナール教授(フランス)の調査結果もある。夜勤の安全リスクが昼間勤務より高いことや、時間とともに疲労とリスクが大きくなる研究結果報告もある。
看護職の恒常的な残業とサービス残業の横行は甚だしい。夜勤者こそ残業規制がされてしかるべきだが、保護に逆行だ。
労基法第15条には、使用者の労働契約に際しての労働条件明示義務、労規則5条には、「始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項」を明示内容としている。看護では、「何人で、何人の患者を担当し、どのような業務を行なうのか。日勤・準夜・深夜はそれぞれ何時から何時まで、各勤務は何回、勤務の間隔は何時間」などが使用者から提示され、看護職の同意を得て決定するということであり、まさしく「夜勤協定」になる。
夜勤協定を締結しないばかりか、一方的に使用者の都合で夜勤回数が野放しにされたり、休憩室の確保も不十分だったり、16時間もの夜勤を強制してくる。他産業では考えられない「非常識」であり、法違反である。
常時、夜勤が生活を左右する看護職を雇用する使用者は、「夜勤協定」で夜勤を規制し、看護職が、元気に、安全に仕事ができるよう、雇用責任を果たすことが求められる。
人員不足と超過密労働、厳しい夜勤で「健康破壊」の現状は、使用者の「健康に働く権利」に対する侵害である。
もう1つの問題として、専門職集団を雇用する使用者責任の問題がある。卒後教育でも、時間外の研修や研究、委員会が、半強制的に実施されたり、「自己研鑽だから」と、超過勤務対象外にされているところも少なくない。専門職としての自己研鑽はもちろん大切だが、すべてを個人責任にし、「専門職集団」を雇用している経営者の雇用責任はないのだろうか。
医療や医学は、すさまじいテンポで発展変化している。最新の知識を習得し、安全でより高いレベルの技術を提供することが、常に医療労働者の責務であると同時に、雇用する専門職集団が遺憾なく能力を発揮できるようにすることも重要である。医療経営者のモラルハザードは、医療を荒廃させる。
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